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通院日

「お母さん、いい名前をつけたねえ」

すうがまだ赤ちゃんだった頃、突然アパートにやってきた、ハンコ屋のお兄さんが言いました。

「セールスとかじゃないから、姓名判断してあげる」

まあ、ちょうどヒマだったこともあって、お願いしてみました。

「この子ねえ、すごーくスポーツのできる子になるよ。サッカーとかやらせてみたら、いいんじゃないかな」

いろいろホメちぎったあげく、お兄さんはハンコを売りこむようなこともせず、去っていきました。

そのころ、すうは夜中に3度も目を覚まして泣く赤ちゃんでしたので、家族みんなが目の下にクマをこしらえているような状態でした。万年寝不足だった私は、すうが見ず知らずのお兄さんにホメてもらえたのが、無条件に嬉しかった。プー母にそのことを話したら、「それは空き巣ねらいの下見じゃないか、そんな風に知らない人を信用するもんじゃない」と言われました。まあ、このご時勢、それもごもっとも、なんですが。

今日は久しぶりに名市大への通院の日。半年ぶりです。私は仕事を早帰りして名市大に向かい、受付だけ済ませて、いったん家に帰る途中、そのお兄さんの言葉と現実のすうとのギャップをぼんやり思いだしながら運転していました。

「ナニが『サッカーとかいいんじゃないかな』、だ・・疲れた母を喜ばせるようなこと言っちゃって・・・ぬか喜びだったじゃんか・・」

ちょっと、涙がじわっ。

イカン、思い出して涙ぐむなんて、気弱になっている証拠だわ。

別に、スポーツのできる子が望みだったわけじゃないし。

すうは、すうだし。

そう、最近の私はちょっと疲れてる、それだけだ。

*   *   *

さて、すうが宿題その他の荷物をまとめまして、さあ出かけようとしたところ、モモが帰宅しました。よかった。りーちゃんの美術部が終わるのを待って一緒に帰ってきたら、5時くらいになってしまいます。ひとりで、暗くて冷えた家に入らせるのはちょいと可哀相だったし、少し危ない気もしましたので、「できたら早めに帰っておいで」と朝話しておいたのです。これからモモはひとりの時間を満喫するでしょう。普段不規則な生活してるから、寝ちゃうかも。「おにぎり買ってあるから、食べてね」

私とすうは4時半ごろ名市大に戻りました。前回はベストタイミングで、戻るやいなや順番がきたという快挙ぶりだったのですが、今回はあいにく「今から5番目です」とナースに教えてもらいました。5番目・・・何時間かかるかな。

私は、すうのえんぴつを借りて、先生に話しておきたいこと3つをメモにまとめました。すうのいるところでこういうことは話せません。だから書いて渡すのです。

①最近、放課後、クラスの男子を遊んでいて、何かのトラブル→ひとり帰宅して家でパニック。マンガやゲームで気分を変えられた。話したがらないので、何があったのかは聞いていません。

②最近、給食時に班の子にきつい口調で注意され、給食食べず→しばらくしたら落ち着いて、掃除の時間に食べられた。

③日曜サッカーチームに入った。不器用さと人間関係が私は心配です。

学校の宿題の計算ドリルだけ済ませると、すうはヒマになってしまいました。本も持ってきていたのですが、それもひととおり眺めてしまえば充分。「やることがない」「もう帰りたくなっちゃった」と繰り返しこぼしておりました。そうだよね。私は読みかけの本を持ってきていましたが、そばにイライラして待っているすうがいると、読むことなんてできません。

外は暗くなってきました。エアコンがきれ、エスカレーターは止まり、受付にはシャッターが下り、ナースステーションの出入り口は施錠されました。「今から何番目ですか」と質問することもできません。

地下の売店に行って、パイの実とコーラを買いました。私も玄米茶のペットボトルを買いました。やはり、こういうときは甘いものや暖かいもの(すうはコーラですが)でほっとしたいですね。

待合室になっている廊下のベンチは、発達障害児と保護者や専門家ばかり。ほとんどの子はDSやPSPに熱中しています。ひとりで来ている青年もいます。運転免許のテスト問題を眺めているので、20歳近いのかな。彼は、途中でイライラしてしまったらしく、がーっと髪をかきむしっていました。やっと医師に呼ばれて彼が診察室に入ったあと、何気なく彼の座っていたあとを見たら、たくさんの髪の毛が落ちていました。

すうは、広いベンチの上で腹筋を始めました。「お母さん、足首押さえてて」ひとりで小学校へサッカーの練習に行くときは、体育館とプールの間のコンクリート敷きのところで腹筋や腕立て伏せをしていると言っていましたが、すうの腹筋を間近で見るのは初めてです。腹筋、というよりも勢いでやっているような感じでした。

トレーニングも一段落し、モモに電話を入れてみました。案の定、寝てました。

「診察まだなんだ。ひとりで公文行ける?暗くて行きたくないなら、休んじゃってもいいよ。休むなら、公文の教室に電話は入れておいてね」

できることならすうの都合にモモを巻き込みたくはないのですが、仕方ありません。

すうは、イライラをある程度通り越したような雰囲気。最近入れ込んでいる日食や月食について語りだしました。時間は8時少し前。

石川先生が診察室から出てみえました。

私たち以外に待っているのは3組。3組の人たちに順番を説明し、

「さあ、すうくん、お待たせしました」

思わず、「やった!」と私は言ってしまいました。

石川先生はにっこり。「なんかに当たったような気持ちになれる、でしょ」

前回まで、すうは診察室内ではホントに落ち着きがなく、ずっとぴょこぴょこ動き回っていたのですが、今回は身長を測ったあとは椅子に座って先生に近況を話し始めました。もちろん日食についても語っています。近況はぼそぼそという感じ、日食については大変流暢でした。先生はすうの言葉通りにカルテを入力していきます。私は書いたメモを渡しました。

「すうくん、しんどいときの気持ちの逃がし方がうまくなってきてるんだね。今日もずっと待っていられたし、ほんとによくがんばってるね。なんとなく合う友だちを見つけるのもうまくなってきてるみたい。王様①たちも日食に興味があるの?」

「・・・日食について図にかいて学校持ってって見せたんですけど、みんな『ふーん』くらいしか反応しませんでした」

「そうか、お母さん、トラブルのときはあれこれ聞き出そうとしなくていいよ。よみがえっちゃうからね。この対応でOK。それにサッカーのことだけど、小さいときのこういう体験は必ずプラスになるから大丈夫。なんかあって落ちこむこともあるだろうけど、フォローしてあげて。すうくん、サッカーもがんばってるの」

「はい、ひとりで練習することもあります。毎日腹筋と腕立てを100回やっています」

「100回も?」

「ゼロか100か、みたいです」と私。

「そうだよね、みんなマジメなんだもんね~」と先生。

「この感じだと、半年に一回くらい来てもらえばいいかな。12月と6月にしようか」

「それじゃ、夏休みの7月と冬休みの12月くらいにお願いできますか」と私。

次回は7月終わりごろの午前中になりました。この予約なら、待ち時間も少ないハズ。きっと。

すうがこんなに自分のことを石川先生に話すのは初めてでした。私はうれしくなりました。ハンコ屋兄さんのことを思い出してちょっとブルーになりかけていたのが、石川先生と話せて前向きに戻れました。先生、ありがとう。

診察が終わると8時半でした。途中でマックを買って帰りました。

モモ、たくさんお留守番させちゃったね。

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